2016年2月25日 16:27
さよなら、「フィーレイ」 - 史上初の彗星着陸に挑んだ小さな探査機の物語 (3) もう、会えなくなるんだね
○フィーレイが残したもの
史上初の彗星着陸という大冒険に挑んだフィーレイは、彗星に着陸するという技術的な困難に打ち勝ったばかりではなく、科学の世界にも大きな成果を残した。
ちょうどフィーレイが最初の冬眠に入っている間、地上では探査機から届いた、彗星の観測データの分析が進められた。
たとえば、フィーレイの下部に設けられた管を入ってくる彗星の塵やガスを分析する「COSAC」(Cometary Sampling and Composition experiment)という装置では、16種類の有機化合物が存在することがわかった。そのうちイソシアン酸メチル、アセトン、プロピオンアルデヒド、アセトアミドの4種類は、これまでの彗星探査で発見されたことのないものだった。
一方、探査機の上部に搭載された、軽いガスを分析する「MODULUS PTOLEMY」という装置は、水蒸気や一酸化炭素、二酸化炭素などを検出している。
COSACとMODULUS PTOLEMYによって発見されたこれらの化合物の一部は、生命の構成物質であるアミノ酸や核酸塩基、糖の誕生にとって鍵となっている。地球になぜ生命が誕生したのかについて論じられるとき、彗星がきっかけになったといわれることがある。