宇宙開発秘録 - 夢敗れたロケットや衛星たち (1) 宇宙から人の目でソ連を監視せよ - 軍事宇宙ステーション「MOL」(前編)
だが、当時はまだ技術が浅く、見たいところにカメラを向け、撮影して地上に送るという、今なら1kgぐらいの超小型衛星でもできることが難しかった。
そこで米国では、「無人の衛星では難しいならば、人間を宇宙に滞在させれば良いではないか」という考えが生まれた。人間の脳と目、手は、ある意味では最強のコンピューターであり、カメラであり、ロボット・アームである。人間ならその目で直接地上を監視することができるし、手でカメラを自由自在に動かすこともできる。何か緊急事態が起きれば、すぐに地上の軍隊に指令を出す判断もできる。
そして1962年、米空軍と米国家偵察局(NRO)は「MOL」(Manned Orbiting Laboratory、モウル)と名付けられた、「宇宙の司令所」を造る計画を立ち上げた。
○宇宙の司令所
実はMOL計画が立ち上がる前から、米空軍は宇宙を軍事利用することに興味を抱いていた。宇宙は空の向こうにある。
ならばそこを支配するのは空軍の役目である、というのがその理屈だった。
米空軍の動きは早く、1957年にはすでに、小型のスペースシャトル「X-20 ダイナソア」の開発計画を立ち上げている。