アルツハイマー病患者は記憶を失うのではなく思い出せないだけ? - 理研
普通のマウスを実験箱Aの中に入れ弱い電流を脚に流すと、マウスはこの嫌な体験の記憶を形成し、翌日同じ箱Aに入れられるとその記憶を思い出して"すくむ"。一方、7カ月齢のADマウスは、嫌な体験をしてから1時間以内であれば箱A内ですくむが、翌日になるとすくまなくなる。つまり、ADマウスは、嫌な体験の記憶を作ることはできるが、24時間後にそれを想起することができなくなっていると考えられる。
そこで同研究グループは、神経が活動するとその発現が誘導される遺伝子の調節領域と標識する期間を限定させることができるTet-offシステムを用いて、ADマウスが箱Aで嫌な体験をしている最中に活動した記憶エングラム細胞において、光感受性タンパク質遺伝子ChR2が発現するよう標識。嫌な体験の翌日、箱Aに入れてADマウスがすくまないことを確認してから、別の実験箱Bに入れ、標識したエングラム細胞群を青色光により活性化すると、ADマウスはすくんだという。これは、ADマウスにおいても記憶エングラムは形成されているが、その記憶エングラムを正しく想起できないことから記憶障害が引き起こされている可能性を示唆している。同研究グループはさらに、このADマウスにおける記憶想起の障害が、神経細胞同士をつなぐシナプスが形成されるスパインという構造の減少と関連していることを突き止めた。