探偵『御手洗潔』シリーズはなぜ、35年目にして映画化されたのか? 原作者・島田荘司語る
――映像化したときに、ひどい出来になりそうだという予感があったのでしょうか?
時代というものがありましたから。高度経済成長期で社会が殺伐としていて、御手洗のようなキャラクターは「威張り屋」と誤解されるのではないかと思いました。皮肉的なありようや楽しいジョークの感覚を、あの頃の日本人は理解できないだろうと。
例えば御手洗が石岡くんや警官に横柄な態度をとったり、内容が演歌的になったりするのではないかという恐怖がありました。当時は乱暴な空気で、原作を読まないで映像化するなんて朝飯前という調子だったんです(笑)。ここ10年くらいは映像化してもいいかなと思っていたのですが、今度は役者を探すのに時間がかかりました。
――今は時代が変わりましたか?
時代の空気が柔らかくなりました。今回はプロデューサーも旧知の人ですし、監督も信頼できました。
玉木さんをはじめとしたいい役者とも出会えたし、仕上がった脚本も見せていただけたので、安心しています。――今回はもともと、映画化を視野に入れていたと伺いました。
最初から映像化ありきで考えていました。私の出身地である広島県福山市の市政施行100周年に、映画をやりましょうと市長に持ちかけたんです。