鉄道トリビア (171) 旧型電気機関車の前後にデッキがあった理由
寝台列車や貨物列車の先頭で活躍する電気機関車。
その車体はおもに箱型だが、最近はくさび形で速さやパワーを強調するデザインも増えてきた。
一方、国鉄時代中期までの電気機関車といえば、箱型のボディの前後に手すり付きの平台、いわゆる「デッキ」を備えた形式が多かった。
あのデッキは何のためにあり、どうしていまはないのだろうか?じつはデッキに想定された役割はなかったらしい。
言うなれば「飾り」のようなもの。
デッキを含めた車体前後の部分で重要だったのは、デッキの下にある車輪のほうだ。
電気機関車が誕生した当時は、蒸気機関車の設計思想が残っていた。
そのため、蒸気機関車と同じく、曲線区間で動輪の向きをレールに合わせるために「先輪」が設けられていた。
電気機関車の多くは車体が箱型だが、先輪の部分は左右に動くため、「箱」の下には入れられない。
そこで先輪は車体からはみ出させることにした。
電気機関車は両側に運転台があり、前後の両方向で高速運転が可能。
だから「先輪」も前後に設置された。
高速で運行する旅客列車用の機関車は先輪が2軸、牽引力を重視して低速な貨物用機関車は1軸だった。