【雑学キング!】もしも科学シリーズ(20)もしも超高温を手に入れたら
物体は光速に近づくほど質量が増加する。実際に重くなるのではなく計算上の話で、速度のエネルギーが質量に上乗せされると考えれば理解しやすいだろう。光速の99%では356倍相当、光速に達すれば質量は無限大(!)となる。トラックに例えるなら、時速100kmに近づくにつれてどんどん積荷が増えるようなものだから、いくらアクセルを踏み込んでも100km/時に達しない。そのトラックを時速99.996kmに加速するようなものだから、RHICが与えるエネルギーは莫大だ。
このスピードで衝突すると、高温/高圧に耐え切れずに原子核が溶ける。すると、陽子と中性子の中に閉じ込められていた素粒子が流れ出し、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)ができ上がるのだ。粒子といってもグルーオンは、アップやダウンなどほかのクォークを結びつける糊(のり)のような役割を果たす、質量ゼロのエネルギーだ。
同時に、光子も電子と陽電子に生まれ変わる。原子の面影などどこにも残されていない。
QGPは全く粘り気のない状態から完全液体と呼ばれている。ビッグバン関連の書籍の多くは「素粒子のスープ」と表現しているが、粘性のなさを伝えるならスープよりも吸い物の方が妥当だろう。