モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』の舞台が現代のロスに! 男女の恋愛模様にワクワク、ドキドキ
ストーリーだけ追うと、頭がこんがらがってしまいそうだけれど、美しいアリアに耳を傾けながら、字幕で内容を押さえていけば大丈夫。登場人物のドタバタぶりに、笑いがこみ上げるシーンも多々あって、飽きることなく楽しめる。
その中でも、二幕の冒頭、伯爵夫人を演じたカルメラ・レミージョが、夫との冷めきった夫婦関係を嘆いて歌うアリア「愛の神よ、ご覧あれ」では、愛する人との関係が冷めてしまった寂しさが伝わってくるようで、思わず伯爵夫人に共感を覚えてジーンとしてしまった。
同じく二幕で、スザンナと伯爵夫人がケルビーノに女装させるシーンでは、女性二人が男性の服を脱がせるという、エロティックな光景が展開。女性二人の欲望がにじみ出るさまに、客席からは笑いが。
さまざまなシーンで、ステージに登場していた紙飛行機にも注目。これは、演出家曰く、キューピットの矢を象徴するものなのだとか。これが視覚的にユニークなアクセントとなっていたように思う。
序曲をはじめ、「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」「恋とはどんなものかしら」など、耳なじみのある音楽やアリアも多く、またモーツァルトの音楽は明るく軽快で、クラシックにありがちな堅苦しいイメージは全くなし。
また、演出の妙も手伝ったのか、会場全体の空気感も終始明るく柔らかく、心地よかった。何度も何度も繰り返されるカーテンコールに最後まで拍手を贈り続ける頃には、スペシャルな時間を味わったという充足感でいっぱいに。
まだオペラ未経験という人、たまにはいつもと違う空間を味わってみるのはいかが? きっと新鮮な体験ができるはず。
・スイス・バーゼル歌劇場「W.A.モーツァルト作曲『フィガロの結婚』全4幕」
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