エコかわいい暮らしの道具、たわし ~知っておきたい“江戸な日用品”案内~
粋で洒脱、でも使い勝手にすぐれた江戸の日用品。京や大坂で生れた道具は、江戸という町で暮らす人々の好みや仕様にあわせた道具へと作り変えられてきました。江戸の道具と暮らしとのかかわりをまとめた拙書『江戸な日用品』から、今の暮らしに取り入れたい東京の逸品“江戸な日用品”をご案内していきます。
『江戸な日用品』(平凡社)/撮影・喜多剛士
誰もが知る“たわし”を生んだ亀の子束子たわしを知らない人はいないと思いますが、使ったことがない人は結構いるのではないでしょうか。かくいう私自身、たわしを使いはじめたのはここ数年のこと。拙書にて亀の子束子・西尾商店に取材をしたことがきっかけとなり、今では台所に欠かせない道具となっています。
『江戸な日用品』(平凡社)/撮影・喜多剛士
さて藁や棕櫚(シュロ:椰子科の常緑高木)の毛を束ね作っているから、その名がついたという“たわし(束子)”。江戸時代以前から洗浄道具として使われていました。そんな束ねた形状を誰もが知っている丸い形へと変えたのは
「亀の子束子・西尾商店」でした。
江戸後期に棕櫚縄業を営んでいた西尾家は、明治期に入り棕櫚縄を使った家庭用品を手掛けるなかで、女性の手におさまる丸い形のたわしを開発。洗浄力の高さと丈夫さでプロの料理人から主婦までじわじわと広がり大ヒット商品になったそうです。
『江戸な日用品』(平凡社)/撮影・喜多剛士
大ヒットしたたわしですが、時代を経てナイロン製スポンジが洗浄道具の主流になり、その姿を見る機会が減ってきました。しかし昔ながらの愛好家はもちろん、エコでかわいいという新たな“たわし”ファンが少しずつ増えてきているようです。そこで昨年末にオープンした「亀の子束子・谷中店」で“たわし”の選び方や使い方などをあらためて教えていただきました。