子どもの暮らしを彩るモノ・コトづくりに愛をもって携わる達人に、その舞台裏を余すところなく語っていただく本連載。7回目は、年間3,000回以上の公演を全国で行う、日本最大級の劇団「劇団四季」の舞台裏におじゃまし、子どもたちへのハートフルな取り組みからその背景まで教えていただきました。
<お話をうかがった達人さん>
古川 由記子さん
劇団四季 劇場部 劇場運営。劇場の顔としてお客様をお迎えするほか、劇場運営スタッフのマネジメント、舞台監督と劇場部との橋渡し役など多岐にわたる業務をこなす。
<劇団四季って?>
全国に専用劇場を持ち、年間の総公演数は3,000以上と、国内最大規模の演劇集団。1998年に開幕したディズニーミュージカル『ライオンキング』は、公演通算回数1万回を超えるロングランに。そのほか、ファミリーミュージカルや、小学生を対象とした大型児童招待事業「こころの劇場」、俳優が実際に小学校を訪れて行う「美しい日本語の話し方教室」など、子どもに向けた取り組みも行っている。
劇団四季の詳細はこちらから。
https://www.shiki.jp/
こころの劇場
https://www.shiki.jp/group/csr/kokoro.html
『美しい日本語の話し方教室』 撮影:下坂敦俊
■劇団四季の「シアターマネージャー」ってどんなお仕事?
私は、劇団四季で「シアターマネージャー」を担当しています。シアターマネージャーにはさまざまな役割がありますが、お客様と直接接する部分では、劇場にいらっしゃる皆様が心地よく観劇していただけるよう、劇場内の環境をととのえています。
たとえば大きな荷物を持っている方やベビーカーでいらしたお母様がいたら、お声がけをして荷物をお預かりしたり、小さなお子様には身長に合わせてちょうどよい高さのシートクッションをご用意したりなど、お客さまが「不都合だな」と感じる前にさりげなくフォローにまわることを心がけています。
シートクッション
■泣いちゃっても…大丈夫! 子連れでも安心な劇団四季のやさしい工夫
劇団四季では、入場に年齢制限を設けていません。公演当日、3歳未満のお子様なら保護者の方のおひざの上でご観劇いただけますので、幼児はもちろん、1歳になる前のお子様と一緒にこられる方も少なくないんですよ。
そうはいっても、「子どもが泣いちゃったらどうしよう」「じっとしていられないから他のお客さんに迷惑をかけてしまうかも…」と気が引けてしまうお母様もいらっしゃるかもしれません。
でも、どうぞご安心ください。劇団四季の専用劇場では、客席の後方をガラスで仕切った「親子観劇室」を設けています。
親子観劇室
お子様のなかには、照明の暗転や演出上での大きな音などにびっくりしたり、怖くなってしまったりする子もいます。親子観劇室は事前予約不要で、そんなときにひとごこちつけていただくためのスペースです。生の舞台ならではの臨場感を味わいつつも、ガラスで隔てられているのでお子様の緊張がほんのりやわらぎます。
お子様がお声をたてるなどちょっと不安になったら一時的に親子観劇室に行き、落ち着いたらまた席でお楽しみいただく。そういった形でご利用いただければと思います。実際、ご家族でいらっしゃることが多い『ライオンキング』では、親子観劇室を多くご利用いただいています。
『ライオンキング』撮影:阿部章仁 ⒸDisney
もし、お子様がどうしても泣き止まないなどでお困りのときには、ロビーでご覧いただくこともできます。ロビーには大きなモニターがあるので、そこで観劇しながら落ち着かれるまで過ごしていただいても大丈夫です。
劇場では、皆様が気持ちよく観劇していただくためのお子様向け冊子「ニコにこ観劇マナーBOOK」を配布していますので、お子様とお目を通していただければと思います。
また、劇団四季では託児所と提携したサービス(※)もご用意しています。
旦那様とのデートやご友人との息抜きなど、大人だけでゆっくり観劇を楽しみたいときなどにご利用いただいています。
※託児所は事前に予約が必要です。また、劇場によって、提携先の託児所が異なり、公演によってはサービスを実施していない場合もあります。
■「子どもたちに観劇を楽しんでほしい」から生まれた子どもへの取り組み
劇団四季が年齢制限を設けず、小さなお子様やその保護者の方にも安心して観劇いただける環境づくりにつとめているのは、「子どもたちにもっと観劇を楽しんでほしい」と考えているからです。
その取り組みのひとつとして、より多くの子どもたちへ演劇の感動を届けるために、2008年から小学生を無料で招待する「こころの劇場」を行っています。
『こころの劇場』 撮影:下坂敦俊
感情がどんどん豊かになっていく時期に、生命の大切さや人を思いやる心、信じあう喜びといった「生きる上で大切なこと」を、日本各地に出向き演劇を通して届けていくこの活動。行く先々で本当に多くの子どもたちから反響をいただいています。
じつは、小学生の頃、こころの劇場を観て感動したのをきっかけに、劇団四季のスタッフになった、という人もいるんですよ。
間近で観て、感じられる生の舞台だからこそ伝えられるメッセージが、きっとあると思います。
観劇し終わったあと、子どもたちを含め、すべてのお客様のこころになにかあたたかいものが残る舞台でありたい。そんなひとつの目標に向かって、俳優もスタッフも一丸となって舞台をつくっています。
■子連れ観劇のはじめの一歩なら「ファミリーミュージカル」を!
世の中にあるたくさんのエンタテインメントのなかでも「観劇」はまだ広く一般的とはいいきれず、とくに、お子様連れだとなおさらかもしれません。
ファミリーミュージカル『嵐の中の子どもたち』 撮影:下坂敦俊
けれど、先にもお伝えしたように劇団四季では年齢制限を設けていませんし、子どもたちにこそもっと演劇を楽しんでもらいたい! と願っています。
春・夏・冬の長期休み期間中に、定期的に公演を行っているのが、ご家族で楽しめる「ファミリーミュージカル」です。
ファミリーと冠しているだけあって多くの親子連れのお客様がいらっしゃるので、気負わずにお楽しみいただけると思います。
ファミリーミュージカル『ガンバの大冒険』
さらに、上演時間もやや短く、ご家族でお楽しみいただける内容なので、観劇デビューとしてもおすすめです。
ファミリーミュージカルの他にも『ライオンキング』をはじめ、『アラジン』『リトルマーメイド』など、ディズニー作品でおなじみのタイトルがたくさんあります。
『リトルマーメイド』 ⒸDisney
絵本や映画でよく知っているストーリーでも、舞台となるとまた一味も二味も違うなにかを感じていただけるはずですので、お子様の興味のありそうなものをチェックしてみてくださいね。
最後に、演劇をもっと楽しむ秘訣をお伝えします。それは、「私も、作品の一部」だと思いながら観劇いただくことです。
『アラジン』撮影:荒井健 ⒸDisney
演劇は、俳優、スタッフ、そしてお客様、劇場にいるすべての人々が一丸となり、ひとつの作品として成り立ちます。たとえ同じ演目を、同じ俳優が演じたとしても、全く同じ舞台になることはありません。そして、その時々のお客様の反応が劇場の空気をつくっていきます。
そう、観てくださるお客様がいてはじめて、「そのときだけの舞台」が完結するんです。
演劇を楽しむときにはそんなこともお子様に伝えてあげると、「ぼくも、わたしも、一緒に作品をつくりあげる一員なんだ!」という気持ちでいっそう演劇の世界に入り込んで、舞台ならではの醍醐味を体感していただけるかもしれません。
一度観ていただければ、こころになにか響くものを感じていただけると思います。親子で感動を共有する体験のひとつとして、観劇を楽しんでくださいね。
<夏休みは劇場へ!>
劇団四季のファミリーミュージカル、2017年夏の公演では、『嵐の中の子どもたち』と『ガンバの大冒険』を予定しています。観劇のはじめの一歩にもぴったりですので、ぜひ足をお運びください。
■劇団四季ファミリーミュージカル夏休み連続上演
公演日程:
『嵐の中の子どもたち』7月23日(日)~7月31日(月)
『ガンバの大冒険』8月6日(日)~8月14日(月)
会場:自由劇場(東京都港区海岸1-10-53)
■ミュージカル『ライオンキング』東京公演
公演日程:7月16日(日)~ ※12月30日(土)公演分までチケット発売中
会場:積水ハウスミュージカルシアター四季劇場[夏](東京都品川区広町2-1-18)
■ミュージカル『ライオンキング』札幌公演
公演日程:10月29日(日)公演分までチケット発売中
会場:北海道四季劇場
(北海道札幌市中央区大通東1-10)
・お問い合わせ・予約はこちらから
劇団四季予約センター:0120-489444(10時~18時まで)
SHIKI ON-LINE TICKET
http://489444.com
文:コミヤカホル