ドキュメンタリー映画「おしえて!ドクター・ルース」より
前回の記事
「91歳の現役セックスセラピストが主人公の映画に学ぶ『子育てのヒント』とは」では、
91歳の現役セックスセラピストのドキュメンタリー映画
「おしえて!ドクター・ルース」についてご紹介した。
彼女がそもそもセックスセラピストとなったきっかけは、移住したアメリカで、女性が正しい性の知識や家族計画を知らずに予定外妊娠をして、人生を犠牲にする姿に心を痛めたことからだ。
ルースは、ホロコーストの孤児であり、元スナイパーでシングルマザー、3度の結婚を経験しているという壮絶な人生を歩んできた90歳で現役のセックスセラピスト。
この問題を研究するために、コロンビア大学大学院へと進み、やがてLGBTQの人々の権利獲得や、エイズ研究の支援など、女性の地位向上や権利を守る運動に賛同していく。
セックスを語る上で、避けられないワードはいくつもあるが、それを茶化していうのではなくて、悩みに応じながらはっきりと口に出すルース。誰もがそのサバサバした口調に圧倒され、引き込まれていくのだが、人が言いにくいことを言語化することほど勇気のいることはない。
しかも、ルースには「政治は語らない」という信念があった。政治に巻き込まれると、この問題は非常に複雑になってしまうからだ。
誰かがやるだろう、ということなき主義の風潮の強い日本では、こういった特異なことをする人物は叩かれる傾向がある。だが、言いにくいことを口に出し、新たに切り開く強い、
芯のある生き方こそ、
これからのこどもたちに必要なことではないだろうか。
■性についての素晴らしさと
リスクを同時に伝える
この性問題をテーマにしたドキュメンタリーは、ぜひお子さんと一緒に見てほしいところだ。だが、この映画には「ペニス」や「ヴァギナ」、「オーガズム」、「オナニー」など、テレビだとピー音が流れるであろうワードが続々と出てきて、親子で固まってしまいそうなシーンがいくつも出てくる。
お子さんに「これどういう意味?」と聞かれて、しどろもどろになってしまいそうだが、これをひとつのきっかけにして話をするのもありだと思う。
ワードだけに引きずられることなく伝えることは、性教育、セックスにおいて非常に重要なポイントだ。
教えるべきは
どうして子どもができるのか、その行為の
素晴らしさや、リスク、避妊、避妊の方法や感染症についてなどだ。
ただし、年齢に応じてどこまで教えるべきかということについては、今後も議論していくべきことだろう。
性に対してだけでなく、
変に隠すことによって、子どもは
余計に興味を持つ。
それならば、
最初になぜセックスをするのか、セックスを幼いうちにするとどういうリスクがあるのか、避妊をする方法や、うっかりセックスをしてしまったことで起きること、誰に相談するかなど、事細かに伝えておく必要がある。
そういう意味でいうと、幼少期の性教育とは違った性教育をする必要があるのではないだろうか。
■性教育の先のセックスについて
シェアできる社会に?
性教育の必要性は筆者自身、とても感じているし、実践もしている。子どもにも堂々と伝えているが、その先のセックスの話を
どこまでシェアするのが良いのかは、正直手探り状態であることは確かだ。
ウェルネス&ビューティジャーナリスト久保直子(筆者)が主宰する性教育ワークショップ『SEIJUKU』(生塾)の風景。
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性の話を母親と話したがらないという子どもがいるのも自然なことだし、なんでも話してもらえるならそれでもいいし、個々の判断が大きく左右するかと思うと、ある程度の指針は子どもを育てる社会として整えていくべきなのだろうとは思う。
国としての指針は正直、あまり期待できないところだろう。批判の多いテーマだし、エイズが広がった際に一度性教育は失敗している過去もある。ただし、この性問題は終わらないし、むしろ問題が拡大しているのは、今までの流れから言っても明白だ。だから、大人も逃げずに、子どもと一緒に真摯に取り組み続けることが重要だ。
今は性教育を志す人も多く名乗りを上げて、いろんな手段を使って発信するようになっている。そこで大切なのは、自分もしっかりと勉強してから情報を吸収することだと思う。
何にでも言えることだと思うが、まずは自分自身で取り組み、疑問に思ったことをシェアして、解決するように横広がりに広げていくことなのではないか。どうしても立て社会構造が強い日本だからこそ、今は横から手を繋ぎあって、面として問題に向かう必要性を感じている。
ひとつのドキュメンタリー映画を通して、また議論すべきテーマを与えてもらったと私自身、いいきっかけとなった。ぜひ、幼少期の性教育を行なっている方も、思春期のお子さんがいる方も、性教育に関心を持つすべての人に観て欲しい。そして、また先を行く性教育の話が盛り上がることを期待している。
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