くらし情報『ドレスドアンドレスド 2024年春夏コレクション - 宙吊りの自画像』

2023年9月7日 11:15

ドレスドアンドレスド 2024年春夏コレクション - 宙吊りの自画像

ブランドを象徴するシングルブレストやダブルブレストのジャケット、ロングコートはブラックでまとめる一方、シアー素材のドレスはホワイトないしブラックをベースに、『骰子一擲』の詩句を、ボディとは逆のトーンでのせている。ここには、白と黒の厳しい緊張関係がある。

先に、『骰子一擲』とはいわば、白と黒とが織りなす星座だと言った。いま「星座」に着目するのならば、それは星々が元から何らかの意味を有しているのではなく、幾つかの星おのおのが持つ輝き、それらのあいだの関係に応じて、何かしらのイメージが浮かび上がるものである。「語群は、あたかも宝石を連ねた玉飾りの上における灯影の一条の連鎖のように、相互間の反射反映によって点火される」(マラルメ「詩の危機」松室三郎訳より)──白い紙の上の黒い染みにすぎない文字、これら語群の絶えざる反射と反映が、虚像を生みだすのだ。

語群が互いに反射し合う詩の空間において、「星座」が現実とは異なる位相に立ち現れるなか、なおも現実に身を置いてこれを語る詩人は限りなく無に近づく。存在と虚無のあいだに宙吊りにされた主体は、それでもなお自らの存在を確かめる。鏡。
確かなフォルムを支えるウールギャバジン、着るにしたがって身体に馴染んでゆくコットンモールスキンという2023年春夏シーズンの素材を引き継いで、研ぎ澄まされた佇まいに、しかしボクシーなシルエットでささやかな抜け感を漂わせるよう仕立てたテーラリングは、こうして執拗に自身の輪郭をなぞるのだ。

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