2021年11月27日 06:00
歌手デビュー40年…宮崎美子「『雨あがる』で学んだ『潔くありたい』の心」
「20代は、何もわからない状態で、とにかく無我夢中でした」
30代になると、少し周りが見えるようになったそう。
「同時に、今度は自分の力不足を感じて、焦りもありました。当時はバブル真っただ中で、トレンディドラマ全盛期。でも私、一度も出ていないんですよ」
当時の経験で今も忘れられないのが、モンゴルへロケに出かけたときのこと。
「現地で訪れた家の中には、何もモノがなかったんです。自分たちがふだんの生活でどれだけ無駄をしているのかと身に染みました。最低限のモノで生活する、移動式のゲルでの暮らしぶりが潔くてカッコいいなあと憧れましたね」
この経験が、41歳で出演した黒澤明監督脚本の映画『雨あがる』で生きることに。
「風呂敷包みひとつでずっと旅をしている夫婦の妻役で、静かで芯の強さがあり、そこにいるだけで何かを語る女性でした」
この役を演じるために、自宅のリビングにちゃぶ台だけを残し、ほかのモノをすべて整理・処分してシンプルな生活を始めた。
「このとき思った『潔くありたい』という考えは、今も持っています。本当に必要なものって、思っているほどないような気がするんです」
この作品で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞。