小さな葬儀社がみた3.11「東日本大震災で亡くなったご遺体はお顔だけが驚くほどきれいでした」
ときみ子さん。「引きずらないことが、この仕事を続けるコツなのかも」とも。
だが昨年末、引きずらないはずのきみ子さんの胸を、いまなお締めつける、そんな仕事があった。
「遠方から車でこっちに来て、自殺してしまった男性がいて。彼のことを迎えにきたご両親と会ったんですけど……。親御さんたちの姿を見ていたら、もう……」
朗らかに、インタビューに応じてきた彼女の目から、不意に大粒の涙がこぼれ落ちた。
「いつもどおり出て行った息子が、変わり果てた姿で見つかったわけだから。ご両親、警察から引き取った車をそれは丹念に調べたそうです。
そうしたら、ドライブレコーダーに、彼の足取りや最期のようすが鮮明に映っていたと……」
人生最後の日、彼は大好きな祖母とよく訪れた店にランチに立ち寄るなど、思い出の場所を巡っていた。やがて、いわき市に入った車は、遺体が発見された駐車場へ。目元を拭い、きみ子さんは続けた。
「彼は車内で練炭をたいて命を絶ってしまったんですが。ドライブレコーダーには、彼が車窓に淡々と目張りをする様子まで残っていたそうです。
それを見たというお母さん、誰に向けてでもなく、絞り出すように言ったんです。