ベア続出も高笑いするのは大企業だけ――日産「下請けいじめ」に透けた縮図
ただし、その成否をにぎるのが雇用の7割近くを占める中小企業だ。日本経済研究センターがまとめた民間エコノミストの賃上げ予測は、平均3.88%。30年ぶりの高水準となった昨春闘の平均3.58%(連合集計)を上回る数字だが、連合が今春闘の要求水準とするのは「5%以上」。そのハードルは高い。
■コスト上昇分を価格に転嫁できない中小企業
グローバルに事業を展開する大企業は円安進行が業績を押し上げ、賃上げの原資も確保できた。バブル期をしのぐ空前の株高にもつながっている。一方で下請けである中小は、物価高に伴うコスト上昇分を価格に転嫁できなければ「じり貧」(小規模企業経営者)のままだ。
中小企業庁によると、物価上昇分をコストに反映できた価格転嫁率は45.7%(23年9月時点)にとどまる。
半年前と1年前の調査を下回り、物価高の長期化で停滞する。人件費に振り向ける余力はおぼつかない。
今春闘の焦点は、大企業の好業績をいかに中小に波及できるかにほかならない。その機運に水を差したのが、日産の下請法違反だった。自動車部品を製造する下請け36社に支払うはずの代金約30億円余りを不当に減額し、その認定額は過去最高という。