ベア続出も高笑いするのは大企業だけ――日産「下請けいじめ」に透けた縮図
■日産は好業績、賃上げ要求は5%超
自動車産業は、完成車メーカーを頂点とする多層なピラミッド構造にある。帝国データバンクの調査(2022年11月)によると、日産グループの一次下請先は1895社、さらに孫請けの二次下請先は1万5160社に及ぶ。上流で雨水がせき止められては、広大な裾野は潤わない。公取委が勧告に当たって「中小の賃上げ実現」にまで言及したのは、大企業のそんな我田引水を戒めるためだ。
当の日産は半導体不足の解消で生産が回復し、好業績が続く。2月に発表した2023年4~12月期連結決算によると、売上高は前年同期比2割増の9兆円余りで過去最高を記録した。純利益は2.8倍だった。日産の労組は最高水準となる月平均1万8000円の賃上げを求めている。
賃上げ率に換算すると5%超だ。満額回答なら、連合の要求水準に達する。
日産によると、減額分全額を下請け側に返金したという。「取引適正化を図ってまいります」ともコメントしている。サプライヤーの牽引こそ、完成車メーカーの使命であるはずだ。独走は許されない。
(文:笹川賢一)