【ライブレポート】平松愛理、コロナを乗り越え2年半ぶりにライブ開催「部屋とYシャツと私」など14曲を届ける
出番前の移動中にサンダルの底が取れていて、緊張で気づかぬまま裸足で歩いていたとのエピソードで笑いを誘い、後半戦へ。
緩やかな弾き語りが始まり、「待ってもいいよ」では夜の都会の雑踏に心象風景を映し出し、「戻れない道」は昔の恋の回想を挟んだ映画の1シーンのよう。ベテランシンガーに今さらではあるが、平松の口跡のはっきりした歌い方はすごく聴き取りやすく、たぶん初めて耳にする曲だったとしても、歌の情景がビビッドに浮かび上がるだろう。もともとの歌詞の巧みさや、やさしい歌声にビブラートを挟んだりする豊かな表現力もあってのことだが。
そして、代名詞である「部屋とYシャツと私」も率直な歌いっぷりで聴き入らせる。大ヒットしたのはもう31年前。世間的には“毒入りスープ”の印象が強いにせよ、改めて聴くと結婚前の想いをエスプリを効かせて描く構成が本当に見事だ。さらに、詞でいえば相手が“ロマンスグレーになって”という年代に実際に入り、今の平松の歌にはより深みが宿って、胸に染み入る。
歌い終わると、ひときわ大きな拍手が会場を包んだ。
暗転の間に立ち上がって、後ろ向きで背伸び。「ここから頑張らせていただきます」