2022年1月13日 12:00
【観劇レポート】人間のドラマが刻印されたミュージカル 熊林弘高演出『INTO THE WOODS-イントゥ・ザ・ウッズ-』
という、その言葉通りの舞台だったと言っておきたい。
通常、ミュージカルという言葉からは、多くの人が、ピンスポット独占のうっとりソロナンバーや、ショーアップされたダンスシーンなどを思い浮かべるだろう。だが、この森のミュージカルには、それがない。もちろん、美しいソンドハイムの歌曲は、原作通り、あちこちに散りばめられている。だが、この作品の登場人物たちは、うずくまり、しゃがみ込み、引っ張り合い、だまし合い、ぶつかり合って、身体いっぱいの泥くさい自己主張を、最初から最後まで止めない。
例えば、羽野晶紀の赤ずきん。物語の進行役・パン屋の夫(渡辺大知)が彼女の赤い頭巾をだまし取ろうとしたとき、彼女のキックはパン屋の急所を直撃する。また、例えば、パン屋の妻(瀧内公美)とシンデレラ(古川琴音)は、金の靴の奪い合いで格闘技そのままのバトルになる。
さらにまた、例えば魔女役の望海風斗。パフォーマーたちに抱え上げられ、リフト状態のまま空中でぐるぐる回転を強いられてもなお、バシッと関西弁のタンカを切る。言いたいことは言わせてもらう、の勢いで。この国の王子たち(渡辺大輔、廣瀬友祐)は、シンデレラやラプンツェル(鈴木玲奈)