トロント国際映画祭:イタリアの不法移民を描く感動作『Anywhere, Anytime』
「その夏、僕は、その仕事をするセネガル人の青年にくっついて、レストランから配達先まで、あちこちを回った。そんな中で、自転車は、ある人たちにとって、まだ非常に重要な存在なんだと気づいた。とは言え、『自転車泥棒』のリメイクをするつもりはなかったよ。それは恐れ多すぎる。あの映画から75年経っても、自転車がサバイバルを左右するのだということを、現代の移民の視点で語りたいと、僕は思ったのさ」(タングシャー)。
それからタングシャーは、移民のためのプログラムや施設を訪ね、多くの人の話を聞いて、リサーチを積み重ねていった。イッサ役に抜擢されたのは、演技とは何の縁もなかったセネガルからの移民、イブラヒマ・サンブー。
「僕が“イタリアのママ”と呼んでいる人が、『知り合いが映画を作ろうとしていて、あなたと会いたいと言っている』と電話をしてきたんだよ。
映画なんてやったことないよと言ったんだけど、会ってみてと。それでコーヒーを飲みながら話すことになったんだ」(サンブー)。
Courtesey of TIFF
演技の経験がないサンブーは、ほぼすべてのシーンに出演する。しかも、映画の撮影は、脚本の流れ通りには行われない。