2021年10月28日 11:00
iakuが挑むこの数年の集大成的作品『フタマツヅキ』開幕
細やかで、リアリティあふれる会話によって市井の人々の等身大の姿を描き出すiaku。主宰の横山拓也が書き下ろす新作が『フタマツヅキ』だ。
フタマツヅキ、二間続き。この言葉は、主人公の父子が暮らす市営団地の間取りを言い表している。新しいマンションのようにドアできっちりと区切られているのではなく、開けようと思えばすぐ開けられる、声も、衣擦れの音さえ筒抜けの襖だけで仕切られた部屋。父はおそらくさほど売れもしなかった元噺家で、そんな父に対して嫌悪感を抱く息子――。
父を演じるのはモロ師岡。元々コメディアンとしてキャリアをスタートさせた諸岡は、一人コントを落語に仕立てた「サラリーマン落語」もライフワークとして30年近く続けている。
そんな彼が噺家くずれを演じるというだけで、期待が高まる。
息子役はドラマや映画で活躍しながら今回が初舞台となる杉田雷麟。さらに、横山が幾度か戯曲を書き下ろしている劇団俳優座の清水直子や、名古屋を拠点とする劇団オイスターズの主宰・平塚直隆らも集う。8人の出演者がそれぞれ出自も活動拠点もみごとにバラバラで、だからこそこんなバラバラの彼らがどのようにひとつの世界を立ち上げるのか、興味が増す。