村上春樹原作『神の子どもたちはみな踊る after the quake』が開幕
彼が『海辺のカフカ』で演じた“ナカタさん”も、猫語を話したり空からイワシを降らせたりと寓意性の強い人物だった。今回も味のある演技を見せてくれるに違いない。木場は語り手も担当する。
対する銀行員・片桐役の川口覚。彼はさいたまネクスト・シアター『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』(蜷川演出)で瑞々しいハムレットを演じ、また倉持作品にも出演経験がある。片桐の他に、新聞記者の高槻としても登場するが、こちらは『蜂蜜パイ』に出てくる人物だ。バイタリティ溢れる男・高槻と、小説を書く男・淳平(古川雄輝)、そして小夜子(松井玲奈)をめぐる、甘酸っぱい青春を引きずった奇妙な三角関係が展開する。淳平は小夜子の娘・沙羅(子役・Wキャスト)が“地震男”の夢を見て不安がると聞き、蜂蜜を取るのがうまい熊のお話をしてなだめようとする。
災害で日常の生活が壊滅するのを目の当たりにすれば、直接の被害者でなくても心が痛む。大きな災害が続く昨今、本作は多くの人の胸に響くのではないだろうか。ふたつの短編がどのように交錯してひとつの物語を紡ぎだし、テーマが浮き彫りとなるのか、倉持の演出に期待したい。文:仲野マリ