『このろくでもない世界で』ソン・ジュンギの悲しい過去が明らかになる本編映像公開
だが、ある日、いつも通り湖に入った子供が出てこなくなったという。チゴンはさらに、タバコを燻らせ、時折ヨンギュの方も気にかけながら続ける。
「もうひとり釣り人がいた。その日も釣れるまで数時間座っているつもりだった。だが5分過ぎた頃、その日に限って竿に力強い引きを感じた。これは大物だ。男は喜んで必死に釣り糸を引いた」。時折ある“箱”を作るチゴンの映像が挟まれる。
「釣り人が釣り上げたのはほんの数センチの小魚だったという。“そんなバカな”と水の中を覗き、仰天した。男は、魚ではなく耳の切れた子供を釣っていた。引き上げたが、子供に息はなかった」と語ると、現在のチゴンの右耳の傷がクローズアップされる。その子供はチゴンに他ならなかった。後ろ姿のチゴンは「死んでいたのに……水を吐いて起き上がった」というチゴンの独白で映像は終わる。
チゴンはヨンギュのように酷い家庭環境で生まれ育ち、裏社会のボスに拾われ今の世界での人生に足を踏み入れていたのだった。私情を挟まず非情なまでに〈汚い仕事〉をこなすチゴンの壮絶な子供時代を知ったヨンギュは覚悟を決め、ますます深みに嵌っていき、後戻りのできないある決断を下すことになる。