長塚京三12年ぶり映画主演作『敵』公開決定 筒井康孝の小説を吉田大八が映画化
登場人物の鷹司靖子、菅井歩美、妻・信子の女性3人がよく描き分けられている。
よくぞモノクロでやってくれた。
■渡辺儀助役:長塚京三
タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題を戴くと聞きました。吉田監督のシナリオは、概ね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませて戴いて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただひとつ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全き絶望とはいえませんからね。
冗談はさて置き、老耄に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢でもあったろう主人公の嘗てのあしらいに、幾星霜かを経て、なお復讐するかのようだ。
「この逆境、老残零落のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。僕の最後の、いや最後から2番目あたりの映画として受けさせて戴きます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。