映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
【水先案内人 高松啓二のおススメ】
『ロッキー』でロッキーの部屋に貼ってあったのがヘビー級ボクサー、ロッキー・マルシアノだ。本作はマルシアノと試合をしたハリー・ハフトの実録映画である。
1949年アメリカ、ハフトはプロボクサーとして暮らしていた。リングネームは“ポーランドの誇りにしてアウシュヴィッツの生還者”。彼は元々ボクサーではなくナチスの強制収容所で無理矢理にボクシングをやらされ覚えたのだ。映画はフラッシュバックで戦時中の収容所はモノクロ、戦後はカラーで描かれる。
強烈なのは娯楽のためにユダヤ人同士を戦わせ、負けるとその場で射殺。
相手が互角だと30ラウンド以上続け、勝負がつくまで試合をさせられる。ハフトは試合に勝ち続け生き抜く。収容所に入る前に生き別れになった恋人をみつけるため戦後もボクサーを続ける。不利にもかかわらずマルシアノとの試合もそれが動機だ。ボクシング映画に見えるが、スポーツとかけ離れたテーマなのが異色である。原題のThe Survivorとは強制収容所を生き抜いた人のこと。