2023年8月14日 14:00
客席でも安心できない?! “体感型ライブショー”舞台『呪怨 THE LIVE』上演中
そこから殺された伽椰子の怨念が様々な人々を事件に巻き込んでいく……。
小林夫妻(左から、小松準弥、大場美奈)
妻の伽椰子(佐々木心音)を殺め押し入れに隠す剛雄(いしだ壱成)
剛雄(いしだ壱成)により悲劇に陥れられていく真奈美(大場美奈)
注目すべきは舞台装置だろう。会場の周りは映像を映すスクリーンの代わりになる黒い紗幕のようなもので囲まれ、舞台は円形であるのと同時に廻り舞台で、中央に精妙な日本家屋のセットが聳えている。それを時には登場人物の部屋に、時には一軒家に見立て盆を常に回転させながら、恐ろしい事件を起こし続ける。そうすることで、そんな凶行が起きる原因は、伽椰子の目に見えない呪いを担保に、日常の生活の延長線上にしかないというモダンホラー的な「いつ、どこにでも起こる恐怖」という生々しい感覚を覚えさせて、物語にリアリティーを与えていた。
客席から登場する伽椰子(佐々木心音)
「体感型ライブショー」という謳い文句にあるように、死者である伽椰子が客席に現れ、観客から悲鳴を上げさせて、アトラクションとしても楽しめる。それだけでなく、原作にほぼ忠実でありながら丁寧なアレンジを施した穂科エミによる脚本や、演出の田邊俊喜の絶えず俳優の感情や肉体を動かすことで、観客の心を揺さぶり敏感にさせて、わずかな出来事で恐怖を感じるようなテンションの高いシーンをスピーディーに生み出す演出が素晴らしく、音響やライティングもきちんと機能していて、しっかりした演劇作品に仕上がっていた。