追悼 岡田裕介さん 東映カラーのルネッサンスを夢見て
そんな慶應ボーイの岡田剛が夏休みに京都に滞在していた際、テレビプロデューサーの逸見稔に声をかけられて、NET(現、テレビ朝日)のナショナルゴールデン劇場『レモンスカッシュ4対4』で高峰三枝子扮する評論家女史の三男坊の大学生を演じたのが、俳優・岡田裕介の初仕事だった。逸見稔は松下電器のスポンサー側プロデューサーとしてテレビ番組の製作を任され、ナショナル劇場の『水戸黄門』『大岡越前』などのヒットシリーズを生んだことで知られるが、岡田茂にはフジテレビのテレビ映画『銭形平次』の制作を依頼して以来の縁があった。映画興行の不振とテレビの台頭を受けて、岡田茂は経営的観点から東映京都撮影所のステージを積極的にテレビ映画にも貸し出して批判を受けることもあったが、そんな折に子息の剛が奇遇にもテレビ界にスカウトされてテレビドラマでデビューを果たしたというのは、なんとも象徴的な出来事だった。『赤頭巾ちゃん』そのままの銀幕デビュー
さて、テレビから出発した岡田裕介が映画俳優となったのは、翌70年にくだんの『赤頭巾ちゃん気をつけて』を東宝が森谷司郎監督で映画化、一般公募の公称五千人のなかから主役の薫役に抜擢された時であった。