2021年12月9日 18:00
他者に手渡していける演劇を―範宙遊泳『心の声など聞こえるか』山本卓卓インタビュー
「範宙遊泳」の山本卓卓が、作演出を兼任するスタイルを手放し、脚本に専念する創作シリーズをスタート。川口智子を演出に迎え、「『This is Japan』というようなもの」を描き出すと言う。演出家の視点を加えないことで、山本の脚本はいかなる変化、そして進化を遂げたのか。話を訊いた。
演出家ありきの“上演台本”から“戯曲”へ
――範宙遊泳の作品ではほぼ作演出を兼ねてきた山本さんが、今回脚本に専念しようと思われたきっかけは?
海外アーティストとのコラボレーションは積極的に行ってきて、日本の演出家ともいつかやってみたいって欲望は昔から抱えていたんです。というのも日本の演劇界の、作演出を兼任することによるスターシステムみたいなものに違和感があって。言ってしまえばカリスマは生まれやすいけど、名作は生まれにくい。つまりどんなにいい作品であっても、他者になかなか手渡されず、その人にしか上演出来ない現状がある。
そういうところから解放された演劇を作ってみたいと思ったんです。
――そこで演出家として白羽の矢が立ったのが川口智子さんです。彼女にオファーされた理由は?
まずお互いACY(アーツコミッション・ヨコハマ)