スピルバーグ監督が最新作『フェイブルマンズ』の製作秘話を語る「この作品に別れを告げるのは、これまでで一番辛かった」
事実を寓話に変えていくにあたり、登場人物である自分をサミー、母をミッツィ、父をバート、3人の妹をレジー、ナタリー、リサと名づけたのだが、“fabelman”という言葉を思いついたのはスピルバーグではなくクシュナーだった。“スピルバーグ”の英訳“play mountain”と、スピルバーグと題材との関係を考慮しつつ、劇作家や演出家が戯曲をよりよく理解してもらうために、その解釈を強調して書いた戯曲の要約を表す“fabel”という演劇用語に行きついたのだという。
本作の撮影はスピルバーグにとって予期せぬ感情をもたらすこととなる。「自分と被写体の間に距離をおこうと思った。だがそれは難しかった。物語は絶えず私を現実の記憶に強く引き戻すからね。実際に自分の身に起こったことを再現し、それを目の前で見ることは、耐えがたく奇妙な体験だった。今まで経験したことのないようなことだった」とスピルバーグは50年のキャリアをもってしても初めて味わう貴重な経験を回顧している。
さらに、「スティーヴンは、撮影中のシーンにのめり込むあまり、“カット”と叫ぶのを忘れてしまうことがあったわ。彼は自分のために時間を割く必要があった」