続いて、まるで誰もが儀式を心待ちにしているような、まるで誰もが儀式を恐れているような、そんな両極端の感情を湧き起こす音楽が流れ出すと、瞬く間にさまざまな声色と表情で、ウシロメタサはもちろん、ウシロメタサを取り巻く人物たちを代わる代わる演じていく岡宮。伸びやかな歌声を響かせながら舞台上を軽やかに動き回る岡宮からは、一瞬たりとも目を離すことが許されない。
ウシロメタサが生贄となる儀式のシーンでは、狼のジブンギライが突如、儀式に乱入しウシロメタサを拐っていく。そんな出会いであったにも関わらず、複雑な事情を抱え、孤独に苛まれてきたウシロメタサとジブンギライは少しずつお互いの事情を理解し歩み寄っていくことに。ウシロメタサとジブンギライが互いに言い合いを重ねていくシーンでは、一人で演じているとは思えないほどの早いテンポ感での台詞の応酬や、クスッと笑ってしまうような掛け合いもあり、その表現力の高さに驚かされる。
グリム童話「おおかみと七ひきのこやぎ」のストーリーをベースとしながらも、原作とはまた違った焦点で展開されていく本作は、果たしてどのような結末を迎えるのか?岡宮が魅せる不思議で新しい童話の世界観をぜひ体感してほしい。