アウシュヴィッツを生き抜き、女性権利のために尽力『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
【水先案内人 高松啓二のおススメ】
1974年フランスで圧倒的男性優位の国会で中絶を合法化する中絶法が成立した。この法律を訴え続けた政治家シモーヌ・ヴェイユの名をとってヴェイユ法と呼ばれた。
彼女は、それだけでなく当時劣悪な環境の刑務所やエイズ患者など虐げられた人々のために闘っていた。その情熱の裏には第二次大戦中にナチスの強制収容所での過酷な経験が彼女を突き動かしていた。政治家時代と収容所時代が交互に映し出され、人生を辿る。あるイベントで議員のシモーヌがコテを使ってレンガを積み上げるシーンでは、コテさばきを褒められ「これが仕事だったから」と言い、何気ない行動からも収容所時代がフラッシュバックする。中でも収容所に入る前に番号の刺青を入れられるが、活版印刷のような金具で焼き付けられるのは初めて知った。
劇中、彼女をののしる人に「親衛隊に比べたら脅威でもなんでもありません!」と言い放つ。アウシュヴィッツと死の行進を生き抜いたからこその重みでシモーヌの強さでもある。女性権利のために尽くし、2017年89歳で死去し国葬された。