ミラノ在住のピアニスト吉川隆弘をソリストに迎えたNHK交響楽団公演に注目したい。
1973年兵庫県西宮市生まれの吉川は、東京藝術大学修士課程修了後にイタリアに渡り、敬愛するピアニスト、アルフレッド・コルトー及びアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの高弟アニタ・ポリーニに師事。現在はイタリア・ミラノを拠点に、ヨーロッパと日本を行き来しつつ、ソロ&室内楽における個性的な活動が注目を集める国際派だ。
その吉川は、今回演奏するベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番について、どのような思いを持っているのだろう。
「多くの音楽家と同じく、私にとってもベートーヴェンは特別な作曲家です。彼の作品は全て重要ですが、中でも『運命』をはじめとした特別な作品に使われた調性「ハ短調」で書かれたピアノ協奏曲は特に大切な作品です。
私にとって演奏することは、物を作る作業に似ています。ベートーヴェンについて持っているイメージや、ベートーヴェンらしさという言葉がありますが、それらは“楽聖”ベートーヴェンの作品を通して培われてきたものであり、これまで人々が聴いて感動した名演の数々によって作り上げられた印象です。