南米を舞台にした、実際に見聞きしたことをステージに乗せて紡ぐ演劇。題材も役者の選び方も上演のかたちも、いまの日本の演劇界には似たものがほぼ見つからない、独自の道を歩んでいる。
「興味のあることをやろうと思ったら、僕にとって身近だったのが南米だった。僕にとっては近いし、行きやすい場所だった。スペイン語にも興味があったし。それを東京や日本の、自分の身の回りだけを見ていたら確かに誰もやっていない。僕のやっていることや扱う題材がどこまで興味を持たれているのだろうとしんどい気持ちになることもあります。でも、日本の外を見てみたら決して僕のやっていることは珍しくもないし、真新しくもない。
移民のことや“慣れ親しんでいる場所ではないところに人が行って、そこで何かが起こる”みたいなことって、いっぱいやられていることなんですよ。だからこれからも、僕は僕が興味のあることをやっていけばいいのかなあ、と思っています」
取材・文:釣木文恵