現代のフランス美術を代表するフィリップ・パレーノによる国内最大規模の個展、箱根・ポーラ美術館で開催
それらが、現実とは異なるノスタルジックな光景を生み出し、ダイナミズムと沈黙、ユーモアと批評性が交錯する詩的な状況を見せてくれるのだ。
自身の展覧会を「カメラのない映画」と形容するパレーノは、同展でも、ドラマチックな構成を演出し、舞台装置のような会場を生み出している。初期の代表作から最新の大型インスタレーションまでを網羅する同展は、例えば輝く雲が浮かぶ部屋から、海の底へ、漆黒の庭へ、そして宇宙へ……と、いくつもの場所と空間をめぐる旅を体験させてくれるという。まさに会場に足を運ばなければ、目にできない世界が待っていることになる。
展示風景:リュマ・アルル、2021年-Courtesy of the artist and LUMA ArlesPhoto © Andrea Rossetti
もうひとつ楽しみなのは、世界各地でその場所の特性や建築を活かした展示を構成してきたパレーノが、今回もポーラ美術館ならではの展示を試みていること。屋外では、太陽を追跡する大型のミラー作品を、また大きなガラス窓から箱根の森の景色が望める展示室では、色とりどりの魚たちが漂う不思議な空間を、季節の移ろいや日々の光の変化とともに楽しめる。