北斎、大観から米田知子まで、多様な空の表現に注目 『空の発見』渋谷区立松濤美術館で
私たちが毎日目にする「空(そら)」は、現代では誰もが共通のイメージを描ける当たり前の存在のように思えるだろうか。だが、日本の美術における「空」の表現は、近世以前と以降では、また明治から現代に至るなかでも、大きく変遷をとげてきたという。その過程に映し出される人々の意識の揺らぎに注目する展覧会が、9月14日(土)から11月10日(日)
まで、東京の渋谷区立松濤美術館で開催される。
日本美術に空はあったのか?——同展は、この印象的な問いかけから始まる。実は伝統的な日本の美術のなかの空は、現代人が思い浮かべる空とは違っていた。近世以前の障屛画に登場するのは、黄金の地や、画面にたなびく「金雲」や「すやり霞」。水墨画のように、空のスペースが余白も兼ね、文字が書き込まれることもあり、空を現実的に表す意識はなかったのだという。
松川龍椿《京都名所図屏風》(左隻)江戸時代後期国立歴史民俗博物館[右隻・左隻の展示替えあり]
現代人に馴染み深い「青空と白い雲」の描写が一般的に登場するのは、近世になってから。西洋画の影響を受けた洋風画や泥絵、浮世絵に青空が見え始め、とりわけ蘭学から地動説を学んだ司馬江漢は、科学的な空間認識をもって青空を描いたのだとか。