19世紀にドイツの修道院で発見された、13世紀初期に南ドイツで書き写されたものとされる詩歌集、『カルミナ・ブラーナ』。ミュンヘンの出身の作曲家、カール・オルフ(1895~1982)がこれに基づいて書き上げた同名のカンタータはあまりにも有名で、映画作品などでも頻繁に使用されている。このカンタータに魅了されたのが、今や世界的スターダンサーであるだけでなく、演出家としても高い評価を得る熊川哲也。「全曲を聞き終わった瞬間に、バレエ作品として構築するためのアイデアが溢れ、たった1時間で全曲の構想をまとめてしまった」という彼が構成・演出・振付を手がける『カルミナ・ブラーナ』が、本日9月4日から2日間にわたって東京・オーチャードホールで上演される。
中世ラテン語とドイツ語の詩や風刺作品などで構成された、遍歴の神学生が書いたとされる詩歌集の内容は、開放的に自然を謳歌した彼らの思想が反映されたもの。だが熊川がオルフの音楽から受けたイメージは、「女神フォルトゥーナの子は、悪魔であった」という発想から始まる型破りなものだった。母である女神フォルトゥーナ(中村祥子)を失脚させて人間界に紛れ込み、世界を操って悪を蔓延させる悪魔アドルフ(関野海斗)