多彩なトリプル・ビル『ニューイヤー・バレエ』が新国立劇場で開幕
“ニュー・イヤー・バレエ”と聞くと、お馴染みのクラシック演目が並ぶ華やかなガラ公演を思い浮かべがちだが、今年の新国立劇場バレエ団はひと味違う。20世紀初頭に革新的なバレエでヨーロッパを席巻したバレエ・リュスの傑作が2作と、現代の舞踊界をリードする中村恩恵が振付ける新作という、一歩踏み込んだラインナップだ。
バレエ・リュスの傑作、『レ・シルフィード』と『ペトルーシュカ』はともにミハイル・フォーキンの振付だが、趣は大きく異なる。前者は森の中で詩人とシルフィード(空気の精)たちが幻想的な情景を繰り広げる、ショパンの名曲の数々をそのまま視覚化したような美しい作品。一方の後者では、見世物小屋にかけられた人形ペトルーシュカの哀しい恋物語が、ストラヴィンスキーの一種不気味な音楽に乗せて描かれる。
そして、そのストラヴィンスキーの組曲『火の鳥』に今回挑むのが中村恩恵だ。新国立劇場バレエ団に振付けるのは、2017年に好評を博した全幕ダンス作品『ベートーヴェン・ソナタ』以来。『火の鳥』といえばフォーキンやモーリス・ベジャール振付版がよく知られるなか、果たして中村版はどのような作品になるのだろうか。
バレエの多彩な魅力に触れられそうなトリプル・ビル、新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』は、本日1月12日(土)から14日(月・祝)まで新国立劇場 オペラパレスにて上演される。
文:町田麻子