失った“明日”は戻らないのか?「少年社中」19年ぶりの『DROP』上演中!
信じたり、疑ったり、不安に思ったり、安心したり、どんどん動く感情と舞台上の物語が呼応するように進んでいく感覚はたまらない。その中で少しずつ明らかになっていく、小説家の記憶の断片や物語の登場人物の過去。それらの多くは想像以上にハードで、思わず引いてしまいそうになる瞬間もあるのだが、役者陣の生々しい芝居がガシッと掴んで離してくれない。これは劇場という、簡単には逃げることのできない場所だからこそのものでもあるだろう。自分も迷宮に巻き込まれ、出口を求めているような感覚になっていく。
全く違うはずのふたつの世界は何度も絡まりながら進行していく。積み重なっていくものに、ハッピーエンドにはならないかもしれないと感じさせられながら、最後の最後までもがきながら進んでいく小説家らに祈るような気持ちになった。彼らが果たしてどんな“明日”を見つけるのか、ぜひ確認してもらいたい作品だ。
「少年社中」ならではの濃密な時間の中、剥き出しともいえる登場人物たちの感情が生々しく胸に飛び込んできた本作。だからこそ、今回取材した【Team Dumpty】バージョンと、安西慎太郎らが出演する【Team Humpty】バージョンでも、全く違うものになるのだろうと確信する。