2024年4月2日 20:00
【レポート】川崎皇輝主演ミュージカル『町田くんの世界』 心が解きほぐされる、極上のヒーリング体験
町田くんの幼い弟が吉野の演じる「けいご」であることなんて、「ずるい」と言いたくなる演出の遊び心ではないだろうか。また、クッションを巧みに用いて弟妹を表現していることには、意表をつかれる面白さがあった。こうした、舞台演劇だからこそできる見せ方が極めて自然に盛り込まれていることも、満足感の高さにつながっているのではないだろうか。
気のいいクラスメート・栄さんや、あざとかわいい系のさくら、父親に複雑な思いを抱いているひかりと、女の子たちがそれぞれに個性的で存在感を発揮していることも魅力のひとつ。男性陣も含め芝居も歌も見事な若手キャストぞろいで、今後もさまざまなミュージカルで彼らの活躍する姿が見られるのではないか、そんな楽しみも感じられる。
そうした手練れ感のあるキャストに囲まれつつ、ピュアな存在感を発揮しているのが川﨑と長澤。保健室でのややぎこちないふれあいに始まり、猪原さんが先に町田くんを意識するようになるが、肝心の町田くんはまったく気づいていない。そんなふたりが可愛らしく、いじらしく、観る者の胸をキュンとさせる。川﨑は誰にでも等しく家族のように大切に、優しく接する男の子である町田くんを体現。