2021年7月1日 12:00
“マルチストーリー”に挑んだDAZZLE新作『NORA』観劇レポート
(c)飯野高拓
ダンスカンパニーDAZZLEが最新作『NORA』を上演中だ。これまでマルチエンディングやイマーシブシアターなど、様々な観客参加を仕掛けてきたDAZZLEだが、今回は、ダンスのほか録音の音声や文字を使って進行する物語のうち幾つかの分岐点で、観客が専用のプレートの青色/赤色で二択のどちらかを掲示し、その多数決で展開が決まっていくという、マルチストーリーに挑んでいる。
舞台は、国民監査局によって査定された社会貢献度に応じて人々がポイントを得、それに応じた生活レベルを送るという、ディストピアめいた “東京”。監視され続ける人々の心は荒んで、幾つものトラブルが起きている。そんな中、人々の口の端に上るのが、「東京C」という名の、いわくつきのオンラインゲームの存在だった。
幼少期に両親を亡くし、孤児院で育ったノラ(金田健宏)は、国から劣等者とされ、社会の底辺に生きているが、ひょんなことから「東京C」に招待される。そこは21世紀の東京を舞台とする仮想世界。「Follow Instinct(本能に従え)」がスローガンとなっており、人々は現実世界の社会貢献度のポイントを消費することで欲望を叶えることができる。