2023年5月16日 16:00
【レポート】美しく、温もりある魅せ方で“不思議”を生みだす ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』
犬は犬ではなく熊になる……。
しかし当時のイギリス演劇界では子ども向けのファンタジーを上演するなど非常識、劇場主のフローマンや劇団員たちは大反対。一方、シルヴィアの4人の子ども、中でも三男のピーターは父を亡くしてから“大人”になろうと、無邪気さや純粋な心を閉ざしていたが、バリと出会ったことで、冒険心や純粋さを取り戻していく。そしてバリは子どもの頃に心に描いていた、大人にならない子どもたちが住む“ネバーランド”の物語に、ピーターたちのイマジネーションを重ね『ピーターパン』の物語を作り上げていくが、そんな中、シルヴィアが体調を崩し……。
大人になりきれない大人と、大人にならざるを得なかった子どもが、現実に傷付きながらも自分たちの大切な信念を手放さずに前を向き、人生を歩んでいく物語だ。少年期に直面してしまう親しい人との別れという悲しみが通奏低音のように流れていながらも、人の温もりや強さが愛情たっぷりに描かれ、優しい気持ちが胸を満たす。
一方で、あのフック船長は、ティンカーベルは、タイガーリリーはどうやって生み出されたのか――『ピーターパン』誕生秘話をユニークに描く作品でもある。