2022年10月10日 16:00
グループの軌跡を振り返る“BLACK”と、今まさに描いているような“GREEN” ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』プレビュー公演をレポート
高く高く上空の、およそ人間が届くとは思えないところにある空気を、彼の歌声は軽々と、次々と切り裂いては振るわせながら、私たち観客をフランキー・ヴァリの歌声に昇天した当時のファンと同化させてくれる。彼がその歌声を宙に放てるよう、見えない乗り物に乗せているのがふてぶてしくも頼もしい藤岡トミーで、それをイヤイヤ漕いでいるのがお人好しの大山ニック、放たれる歌声を上空で待機して操っているのがスマートな東ボブ……チームBLACKは、喩えるならそんな印象だ。
藤岡正明
大山真志
東啓介
一方のチームGREENは、4人揃ってひとつの乗り物を漕いでいるよう――というのはBLACKに引っ張られた少々強引な喩えだが、グループの軌跡を後から振り返っている感の強いBLACKに対し、一つひとつ確かめながら今そこで軌跡を描いているような印象を受けたのは事実。ひたむきな花村フランキー、色気と哀愁の漂う右近トミー、余裕綽々の有澤ボブ、大山とはほぼ正反対の豪快なspiニック、それぞれが魅力的だった。
花村想太
尾上右近
有澤樟太郎
spi
新生ボーイズに加え、シアタークリエの倍以上の客席数を持つ日生劇場仕様にバージョンアップされた演出もまた今回の見どころ。