写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す「諏訪敦『眼窩裏の火事』」12月17日より開催
府中市立美術館では、12月17日(土) より、諏訪敦『眼窩裏の火事』を開催する。
精密で再現性の高い画風が知られる諏訪敦は、しばしば写実絵画のトップランナーと目されてきたが、ただ単に「目の前にあるものを、目に見えるように写す」のではなく、丹念な取材によって、すでに亡くなった人物の内面や生き方に肉薄するような、新たな視覚体験を追求していることが特長だ。
たとえば同展の第一章を構成する「棄民」は、会ったことのない祖母をテーマにしたプロジェクト。死を悟った父が遺した手記を手がかりに、旧満州の日本人難民収容所で飢えと病に苦しみながら亡くなった祖母の足跡を求めて現地に赴き、その取材の課程で知り得た家族の歴史を、持ち前の超絶技巧を駆使して絵画化していくというものだ。
また第二章では、コロナ禍『芸術新潮』(2020年6~8月)誌上において行った集中連載で、静物画にまつわる歴史を遡り、制作した作品を紹介。まな板の上の豆腐を描いた《不在》などは、日本で最初の油絵画家・高橋由一の代表作《豆腐》を念頭において鑑賞したい。
そして第三章では、諏訪が1999年から描き続けてきたが2020年になくなってしまった舞踏家・大野一雄との邂逅の試みなども紹介。