鬼才テレンス・マリック監督作。壮大な自然と戦場の対比、兵士の内面を描写した異色の戦争映画。「シン・レッド・ライン」 12月4日(土)よる7時~BS12 トゥエルビで放送
だが、そうした場面と同じくらいの重みで、植物や鳥など美しい自然や生き物や、島の住民たちの平和な暮らしが映し出される。そして、何人もの兵士たちの内面の声が重なり、戦争という巨大な悪は不可避なものなのか、死が身近に迫る世界で生きる意味は何なのか、と哲学的な問いが観客に投げ掛けられる。
ショーン・ペン、ニック・ノルティ、ジョージ・クルーニーら出演を熱望した大物俳優たちを配しながら、中心となる二等兵の役には、当時は無名だったジム・カヴィーゼルを起用。「戦争の英雄たちの物語」になりそうな素材を、無名の兵士たちの悲しみを感じさせる作品にしたのが、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した理由でもあるだろう。
ガダルカナル島の戦いでの死者は、日本軍が約1万9000人、米軍が約7000人。約80年前、いずれの母国からも遠く離れた小さな島で、これほど多くの命が失われたのだ。日本人としては、映画の中の「敵」が日本軍であるのはつらいことだが、勝者の側が作った映画からも、勝利の喜びはみじんも感じられない。最前線の戦場に勝者などいない、という沈鬱なメッセージが伝わってくる。
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