シナトラの未発表音源も使用! 『カム・フライ・アウェイ』は何がすごいか
アメリカのポピュラー音楽やジャズに馴染みのある人ならば、きっと興奮せずにはいられない。耳に心地良く、目に鮮やかで、胸に残る。懐かしくも新しい、ブロードウェイ・ミュージカル。今夏予定されている日本初上陸を前に、『カム・フライ・アウェイ』の魅力を探った。
『カム・フライ・アウェイ』公演情報
取材に訪れた先は、全米ツアーの公演地であるケンタッキー州のレキシントンだ。歴史あるオペラハウスは、話題作を心待ちにしていた人々の熱気に満ちていた。やがて照明が落とさた客席が、ひとつの声で、一瞬にして静まりかえる。フランク・シナトラの歌ばかりを使用したダンス・ミュージカルだという事前情報がありながら、いきなり脳天を直撃されたような感覚を引き起こした曲は、ア・カペラによる『Stardust』。
そのビロードのような質感の声に誘われて観客がトリップした先は、都会のナイトクラブだった。熱々の恋人たちや、倦怠期のカップル、恋人のいないオクテの若者まで、男女8人がひと夜のうちに繰り広げる恋の駆け引き。基礎からテクニックを身につけた腕利きのダンサーたちが、それを演じている。複雑に入り乱れる感情をセリフなしで表現する彼らのパフォーマンスは、アクロバティックでありながらデリケートで美しい。