「相当なバカだが音楽の天才」。行定勲監督、カリスマ指揮者・フルトヴェングラーを語る
周囲は迷惑だったろう。フルトヴェングラーは亡命の選択肢もあったが、ドイツにとどまったからこそ、今、音源も豊富にある。外から見ればナチの宣伝塔でも、ユダヤ人の芸術家をたくさん助けもした。優先すべきなのは政治なのか、それとも芸術なのかは、むずかしいテーマ」。
イベントでは、とある映像が紹介された。演奏後、フルトヴェングラーがナチスの宣伝相ゲッベルスと握手をしていることで有名な、1942年のベートーヴェン第九のラスト数分とカーテンコールの映像だった。ヒトラーの誕生日を祝うコンサートである。
「他のスケジュールを入れて逃げようとしていたコンサートだが、外堀を埋められてしまう。
いやいや演奏しているはずなのに、終わってみると、フルトヴェングラーが残した第九の演奏でも1、2を争う熱演」との中川の解説に、「相当なバカ。手を抜けばいいのに。純粋に音楽の天才なんでしょうね。全力を尽くしてしまう」と苦笑する行定。会場からも笑いが漏れる。
舞台への抱負を語る行定が、イベントを締めくくった。「芝居のタイトル「テイキングサイド」は「立場の選択」というような意味。脚本家のロナルド・ハーウッドはユダヤ系。
父母の体験からナチには反感があったが、そればかりではない。