勝村政信ら日韓両国の俳優が競演。鄭義信の新作舞台「アジア温泉」が開幕
とアユム(成河)の兄弟がやって来る。先祖代々伝わる土地をよそ者に売るまいとする島の古老・大地(キム・ジンテ)と彼らは対立するが、アユムと大地の娘・ひばり(イ・ボンリョン)が道ならぬ恋に落ち……。と、「ロミオとジュリエット」になぞらえることができそうな物語の中に、異なる認識や文化に生きる様々な事情を抱えた人々の悲喜こもごもが描かれる。金銭でクールに土地をやり取りしようとする人々に対する大地の「そもそも土地は売り買いするもんやない!」という台詞などから現実に横たわる問題を彷彿せずにはいられないが、作り手が意図するものは日本と韓国という二国に限定したものではないのだろう。それは「大地」「フユ」「かめ」「ひばり」といった何者にも限定されない登場人物の役名、またなにより「アジア温泉」という広大なイメージを持つタイトルからも見てとれる。
とはいえ、日本と韓国の境界線に生きる作家・鄭義信の俯瞰的で公平な視点から、観客が現実問題にフィードバックして気づかされるものも多々あるはず。まずは互いを知ること――あまりに初歩的だが大きな一歩となる力強い道しるべが、絶望における一筋の光のようにまばゆく投げかけられる。公演は5月26日(日)まで、東京・新国立劇場にて。
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取材・文:武田吏都
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