イメージの洪水! カンパニー・フィリップ・ジャンティ『動かぬ旅人』開幕
舞台の魔術師、フィリップ・ジャンティ率いるカンパニーによる公演『動かぬ旅人』が5月22日、東京・PARCO劇場で開幕した。ジャンティの作品は不思議な魅力を持った人形、ダンス、マイム、マジックを駆使して舞台空間に生命を吹き込む、他に類を見ないステージアート。上演作は、「カンパニー最高傑作のひとつ」と絶賛された舞台で、日本では1996年に公演しているが、今回の来日公演では完全リニューアル版を上演する。
カンパニー・フィリップ・ジャンティ『動かぬ旅人』
気がつくと、周りを青い海に囲まれ、人々は漂う台の上。台はしだいに小さくなり人々は箱の中に押し込められたかと思うと、再び頭に箱をかぶせられて登場する。箱の中の顔はみんな同じ顔。どこからか赤ん坊の「パパ?」という声がする。作品冒頭のシーンだ。
赤ん坊は何を問いかけているのか。観客はかすかな疑問を抱えながら、フィリップ・ジャンティが繰り出すイメージの洪水の中で溺れていく。時に心地よく、時に心の奥をゆさぶられながら。
青い布や白いビニールで表現される海。紙で作られた荒野や砂漠。そんな風景の中で、人々と人形が不思議な旅を繰り返す。今作でもジャンティの美学が隅々までいきわたる幻惑の世界をたっぷりと堪能できる。