この作品に登場するクンドリーという女性を例に挙げてみましょう。彼女は、十字架にかけられたキリストを嘲笑したために呪われ、何度も生まれ変わって苦しい人生を歩まなければならない運命にありますが、これはまさに仏教の輪廻の考え方に基づくものです」
登場人物の在り方や関係性、物語の結末に至るまで、多様な解釈が成り立つのが本作の大きな特徴だが、今回の演出では、何が善悪かをきっぱりと分けることはしないとクプファーは言う。
「登場する人物はそれぞれが“道”を探しています。辛い人生の苦しみからの解放、救済と言い換えても構わないでしょう。その道の先にあるのは“神”であり、キリストかもしれないしブッダかもしれない。それはそれぞれが決めればいいことではないでしょうか」
作品の結末はあえて提示せず、観客ひとりひとりに委ねるというクプファー。ワーグナーが描いた壮大な世界観と同様に、あらゆる可能性を内包した演出で、どのような舞台を見せてくれるのか注目だ。新国立劇場オペラ『パルジファル』は、10月2日(木)から14日(火)まで開催(全5回)。
◆新国立劇場オペラ『パルジファル』
10月2日(木) 16:00開演
10月5日(日)