ルイズはやがて、祖国のために戦うヨーゼフと、音楽の魂を守り抜こうとするフレデリックの間で揺れ始める。周囲にいる者も同様だ。自分にとって最も大切なものは何なのか。自分は何のために生きるのか。どの道を選べばいいのか……。現代にも通じるテーマを、それぞれがたたみかけるように歌い上げるシーンは、ミュージカルというものの力強さを感じずにはいられない。手塚治虫はクラシック音楽を愛好していたそうだが、芸術の力を信じた原作者の思いが、この舞台の上で見事に結実している。
圧巻は、最後に生田が奏でるショパンの名曲『革命』である。
フレデリックことショパンが、友と祖国を思って一気に書き上げたとされている曲だ。そこに込められたものを思うとき、自分の胸に去来するのはどんな感情だろう。しっかりと見つめてほしい。舞台は10月5日(日)まで。
取材・文:大内弓子
※手塚治虫の「塚」は旧字体
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