今年も「第九」の季節がやってきた。いまや俳句の季語にもなっている暮れの風物詩だが、なぜ年末に「第九」なのか。さまざまな説があるものの、決定版的な答えは見つからない。しかし「年末の第九」が恒例化した様子を、演奏記録からおおまかに探ることはできる。
チケットぴあ/「第九」コンサート特集2014
1926年発足の新交響楽団(NHK交響楽団の前身。1942年に日本交響楽団。1951年に現称)が最初に「第九」を演奏したのは、ベートーヴェン没後100年の1927年5月のこと。日本のプロ・オーケストラによる初めての「第九」だ。
そして新響は翌1928年、初めて12月に「第九」を演奏している。同楽団の初代指揮者・近衛秀麿による日本人指揮者初の「第九」が、日本の師走に響いた初めての「第九」でもあった。ただし、新響の次の「年末の第九」は10年後の1938年まで待たなければならない。そしてどうやらその1938年12月こそが、「年末の第九」恒例化の始まりと言えそうなのだ。
1938年末の公演を指揮したのは専任指揮者としてドイツから招かれていたジョセフ・ローゼンストック。「年末の第九」の定着に、彼の示唆が影響したとも言われる。