そして、物語のキーパーソンである兄の永沢恭一を演じるのは多田直人。宮沢賢治を敬愛し、聡明さと正義感を持つ恭一の姿に多田自身の存在が重なった。
“自己犠牲の精神”ゆえに命を落とした恭一の心の奥を探る旅は、賢治の未発表童話『ペンネンノルデの伝記』になぞられたストーリーに彩られながら、ドラマの後半で徐々に明らかになっていく。
近しい者同士であっても、感情のすれ違いやどうにもならない過去のエピソードなど、人間の清濁に迫ろうとするほさか脚本の特色が随所に見られる。また、白を基調としたセットが組まれ、全体的にソリッドな舞台空間に仕上がっているのは、作品が持つ哀感の影響か。背景の白壁に画像や照明を映し出す演出は、他のキャラメルボックス作品では見かけず新鮮な印象を残す。ほさかの脚本と、演劇への熱情を包み隠さず表現するキャラメルボックスの化学反応が新たな世界を広げたと言える。
来年、創立30年を迎えるキャラメルボックス。
新しい刺激を内包した今回のコラボレーションは、劇団の更なる挑戦を予感させた。公演は24日(水)まで。なお、同劇場では『ブリザード・ミュージック』を25日(木)まで同時上演中。チケットは公演前日までチケットぴあにて発売。
取材・文:園田喬し
TWICE・SANA、艷やかなタキシードコーデで表参道に降臨 2024年振り返り「たくさんの初めてを叶えた」